
判決(債務名義)に基づく強制執行
裁判に勝っても安心できない?本当の勝負は「強制執行」
「裁判で勝訴判決(債務名義)を得たのに、相手が1円も支払おうとしない」
これは債権回収の実務で少なからず起こることです。
裁判所の判決や和解調書、仮執行宣言付支払督促、執行証書(強制執行認諾文言付きの公正証書)などは、法律上「債務名義(さいむめいぎ)」と呼ばれ、強制執行を申し立てるための「許可証」のようなものです。相手が自主的に支払わない以上、次のステップである「強制執行(財産の差押え)」を速やかに申し立て、相手の財産から強制的に回収する必要があります。
債権差押えとは?(実務で多く用いられる回収手段)
強制執行には、不動産を売却する「不動産競売」や、自動車・商品などを差し押さえる「動産執行」もありますが、手続きに時間と費用がかかるため、実務で多く用いられるのが「債権差押え」です。
相手(債務者)が「第三者(銀行や取引先など)」に対して持っている金銭の請求権を裁判所を通じて差し押さえ、相手の手元に渡る前に、こちらが直接取り立てる手続きです。
- 預貯金口座(銀行・信用金庫など)
- 特徴と回収効果【即効性が高い】差押命令が銀行に届いた時点の口座残高を押さえ、回収します。相手の事業活動や生活への影響が大きいため、支払いに向けた交渉につながることもあります。
- 売掛金・請負代金(取引先への請求権)
- 特徴と回収効果【企業間トラブルで有効】相手がその取引先から受け取るはずの売掛金を、代わりに自社へ直接支払わせます。取引先との信用に関わるため、相手が和解・支払いに応じるケースもあります。
- 給与・役員報酬(勤務先への請求権)
- 特徴と回収効果【個人への回収】毎月の給与の手取り額のうち、原則4分の1まで(手取りが月額33万円を超える部分は全額)を継続的に回収します。勤務が続く限り、完済まで毎月回収を続けられます。
| 主な差押対象 | 特徴と回収効果 |
|---|---|
| 預貯金口座(銀行・信用金庫など) | 【即効性が高い】差押命令が銀行に届いた時点の口座残高を押さえ、回収します。相手の事業活動や生活への影響が大きいため、支払いに向けた交渉につながることもあります。 |
| 売掛金・請負代金(取引先への請求権) | 【企業間トラブルで有効】相手がその取引先から受け取るはずの売掛金を、代わりに自社へ直接支払わせます。取引先との信用に関わるため、相手が和解・支払いに応じるケースもあります。 |
| 給与・役員報酬(勤務先への請求権) | 【個人への回収】毎月の給与の手取り額のうち、原則4分の1まで(手取りが月額33万円を超える部分は全額)を継続的に回収します。勤務が続く限り、完済まで毎月回収を続けられます。 |
債権差押の流れ
STEP 1
財産の特定・調査(弁護士による調査)
相手方の預金口座、売掛金の取引先、勤務先などを、各種の制度を使って特定します。
STEP 2
地方裁判所へ「債権差押命令」の申立て
債務名義(判決等)や財産の情報をもとに、申立書を作成・提出します。
STEP 3
裁判所から「差押命令」の送達
第三債務者(銀行や取引先など)に差押命令が届いた時点で、口座残高や売掛金の支払いが止められます。
STEP 4
直接取立て・回収
差押命令が相手(債務者)に届いてから1週間(給与等の場合は4週間)が経過すると、銀行や取引先へ直接請求し、自社口座へ送金させることができます。
「どこの銀行?どこの取引先?」をどうやって特定するか
債権差押えを申し立てる際、裁判所が「相手の口座を探してくれる」わけではありません。申立人の側で、「〇〇銀行 〇〇支店」や「〇〇株式会社に対する売掛金」と特定して指定する必要があります。
ここで「口座がわからない」と行き詰まってしまうケースが少なくありません。当事務所では、法的な手続きと調査のノウハウを組み合わせて、相手方の財産の特定に取り組みます。
当事務所が実践する「財産特定」のアプローチ
- 弁護士会照会(弁護士法23条の2)弁護士会を通じて、携帯電話会社や過去の取引先などの団体に照会を行い、銀行口座や取引先に関する情報を調べます。
- 金融機関への全店照会判決などの債務名義がある場合、弁護士会照会を利用して、照会に応じている銀行に対し全店舗を対象に口座の有無や残高を照会します。
- 第三者からの情報取得手続改正民事執行法で拡充された制度を活用し、裁判所を通じて、金融機関から預貯金の情報を、登記所から不動産の情報を取得します。
- 過去の取引・口座履歴の分析過去の入出金履歴、メールの署名、契約時のやり取り、請求書の発行元などから、相手方のメインバンクや主な取引先の「当たり」をつけます。
第三者からの情報取得手続とは
第三者からの情報取得手続は、民事執行法(2020年4月1日施行の改正で新設)に定められた、債務者の財産情報を、債務者本人ではなく第三者(金融機関・登記所・市区町村・年金機構など)から取得する手続です。債務名義を持っていても、債務者の財産(預貯金、勤務先、不動産など)が分からないと強制執行ができないため、その壁を取り除くための制度です。
手続の種類(民事執行法204条〜211条)
- 登記所(法務局)
- 取得できる情報債務者所有の土地・建物の情報
- 条文205条
- 銀行・信金・証券会社・振替機関など
- 取得できる情報預貯金債権(支店名・口座番号・残高)、上場株式・国債等の情報
- 条文207条
- 市町村・日本年金機構・共済組合など
- 取得できる情報給与債権(勤務先)の情報
- 条文206条
| 取得先 | 取得できる情報 | 条文 |
|---|---|---|
| 登記所(法務局) | 債務者所有の土地・建物の情報 | 205条 |
| 銀行・信金・証券会社・振替機関など | 預貯金債権(支店名・口座番号・残高)、上場株式・国債等の情報 | 207条 |
| 市町村・日本年金機構・共済組合など | 給与債権(勤務先)の情報 | 206条 |
給与債権の情報取得は、市町村(住民税の特別徴収義務者として勤務先を把握)、日本年金機構・共済組合等(厚生年金の加入先として把握)に照会します。
申立ての要件
共通の要件として、次が必要です。
- 執行力のある債務名義の正本を持っていること(判決、和解調書、仮執行宣言付支払督促、強制執行認諾文言のある公正証書など。債務名義の種類は問いません)
- 強制執行をしても完全な弁済を得られなかったこと、または知れている財産に強制執行をしても完全な弁済を得られないことの疎明
- 申立先は、債務者の住所地を管轄する地方裁判所(住所地がない場合は、財産の所在地等を管轄する地方裁判所)
加えて、取得する情報の種類によって次の区別があります。
- 預貯金・上場株式等の情報財産開示手続を先に行う必要はなく、債務名義があれば上記の要件で申し立てられます。
- 不動産の情報先に財産開示手続を行い、その実施から3年以内に申し立てる必要があります。
- 給与債権(勤務先)の情報養育費等の債権、または人の生命・身体の侵害による損害賠償請求権を請求する場合に限られ、先に財産開示手続を行う必要もあります(206条)。一般の貸金・売掛金では使えません。
当事務所の事件処理方針
当事務所では、追加着手金を気にせず動ける定額スキームを活かし、判決の獲得から差押えまで間を置かずに着手します。複数の銀行・支店や売掛金の取引先を同時に差し押さえることで、回収漏れの防止に努めます。